首里金城町石畳道は、沖縄県那覇市に位置する歴史的な石畳の道であり、琉球王朝時代の栄華を今に伝える貴重な遺産です。この道は、首里城から那覇の貿易港へと続く重要なルートであり、その歴史と風情に満ちた佇まいは、多くの訪問者を魅了しています。
首里金城町石畳道の建造は、1522年、琉球王国の尚真王の治世に始まりました。この道は、首里城の入口から金城坂、金城橋、識名坂を経て、真玉橋へと続く全長340メートルの石畳道です。何代もの人々の足音で磨かれたこの石畳は、美しい光沢を放ち、その輝きは時を経ても変わりません。
この道は、単なる交通路であるだけでなく、首里城の美化政策の一環としても重要な役割を果たしていました。また、貿易港である那覇との連携を強化するための主要な道でもありました。そのため、琉球王国の和寇撃退など、軍事的な目的でも活用された歴史があります。
第二次世界大戦中の沖縄戦では、真珠道の大部分が破壊されましたが、1983年に歴史的地区環境整備事業によって再び石畳に整備されました。金城町に現存する238メートルの区間が、現在の首里金城町石畳道としてその姿を伝えています。
現存する石畳道には、年月を経て光沢を帯びた琉球石灰岩の平石が敷き詰められています。沿道には近世以前の石垣も多く残り、乱敷きに配された20~30センチメートルほどの平石の表面は、小叩きに仕上げられています。こう配が急な部分では階段を設けたり、滑り止めの溝が彫られるなど、歩きやすさを考慮した工夫が随所に見られます。
道沿いには、石垣と赤瓦屋根の木造住宅が並び、「あいかた積み」と呼ばれる建築手法が用いられています。この地域は、世界遺産に登録された首里城跡をはじめ、玉陵、園比屋武御嶽石門、識名園、守礼門、弁財天堂、円覚寺跡など、多くの文化財が集中するエリアであり、観光スポットとしても大変人気があります。
石畳道の途中には、大きなアカギの木が6本、琉球榎が1本繁茂しており、苔むした石畳や赤瓦の家々と相まって、古都首里の城下町を思い起こさせます。特に、最も大きなアカギの木は樹齢300年を超え、胸高周囲5.2メートル、樹高13メートル、枝ぶりは17メートルに達します。このアカギの木は、1972年に国の天然記念物に指定されました。
さらに、金城大樋川毛跡では、坂道を通る人々に飲み物を提供していた村屋が保存されています。ここは、沖縄戦の戦火を奇跡的に免れた貴重な場所であり、琉球王朝時代の面影や豊かな文化を今に伝え続けています。
首里金城町石畳道は、沖縄県指定文化財(史跡・名勝)に登録されており、1987年には「日本の道100選」の一つにも選ばれました。この道は、NHKドラマ「ちゅらさん」の撮影地としても知られ、沿道の民家が主人公の自宅外観として使用されました。
行政上の道路の路線名は「那覇市道金城2号」であり、地域では「シマシービラ」とも呼ばれています。市民の散策コースとしても人気があり、沖縄県の主要な観光地としても広く知られています。
首里金城町石畳道は、観光客だけでなく地元の人々にも愛され続けており、その歴史的な価値と自然美が一体となった風景は、多くの人々の心に深い印象を残します。この道を歩くことで、琉球王国の栄華とその後の歴史を感じることができるでしょう。